秋の夜長(2)
『コーポレート・ファイナンス入門』(砂川伸幸)日経文庫から
難しそうなテーマなのにあっという間に読めてしかも理解しやすい。一冊読み終えた後には少しだけ自信がついていることを受けあいます。学生の方なら基礎固めにお勧めの一冊ですし、すでに企業で務めている方には少し優しいかもしれませんが、やはり一度は読んでおいてほしい一冊です。最近では「株主重視の経営」であるとか、また株主の意見を企業活動に活かそうとする(コーポレート・ガバナンス)考えもよく叫ばれるようになりましたので、その意味でもやはり勉強しておきたいテーマです。
さて、企業が扱うマーケットには三つありますね。ヒトのマーケット(雇用、人材)、モノのマーケット(設備、原材料)そしてお金のマーケット(資金)と付き合っていくわけですが、勿論コーポレート・ファイナンスが取り扱うのはお金のマーケットです。このマーケットで企業が資金を調達するには大きく二つの方法があります。ひとつは負債調達;この場合の投資家は銀行、今一つは株式調達;この場合の投資家は株主。そして投資家からすれば、リスクとリターンを考慮して投資行動をとるわけです。ここでいうリターンのことを「資本コスト」と呼びます。この資本コスト(Cost of Capital)が稼げれば企業は資金調達がしやすいのは言うまでもありません。この「資本コスト」を常に念頭に置いて企業経営を行うことが「株式重視の経営」であると言えます。
ここで面白いと思うのは、「企業価値と企業の資本構成(負債と株式の構成)は無関係」だということです。初めてこの文章を読んだときにはいっている意味がいまひとつ分かりませんでしたが、なるほどそう言われてみれば、資本構成が異なる企業であっても生み出すキャッシュフローが同じであるなら、株主は資本構成にかかわらず市場原理に基づいて行動する、つまりマーケットの評価に従って行動する(「マーケットにおける裁定取引」)わけですからそうだと言えます。(ちなみにキャッシュフローとはキャッシュインフロー;入ってくる現金からキャッシュアウトフロー;出ていく現金を引いたもの。このあたりの用語も押さえておく必要がありますね。)この理論はノーベル経済学賞の受賞者が提唱したものです。さすが!
※負債比率=レバレッジ(Leverage)またはフィナンシャル・レバレッジ(Financial Leverage)
マーケット・ポートフォリオ=日経平均やTOPIXのような株式市場全体の指標
日経平均=日本の代表的な企業225社の株価平均
TOPIX=東京証券取引所一部上場企業の株価の平均
企業経営をしている筆者の弟が、ビジネスプランを立て、投資家に会い、資金を調達し、キャッシュフロー(「企業活動の成果」)を生み出していくその過程をそばでつぶさに眺めながら、あらためて経営の面白さと難しさを実感しているこの頃です。
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